大企業と零細企業の仕事の違いを徹底解説

大企業でしか働いたことがない人は零細企業での仕事がどのようなものか分からないと思いますし、逆もまた然りでしょう。

私は大企業と零細企業の両方を経験しました。現在は零細企業(家業)にいます。

メーカー(大企業)にいたときは、設計・開発を担当する技術者(エンジニア)でした。

さて、この記事では実体験に基づいて大企業と零細企業の仕事の違いについてお話しします。

就職・転職を考えている方の参考になればと思います。

従業員の担当業務の広さ

大企業の場合

大企業の仕事は世界規模です。

メーカーであれば、海外にもシェアを持つ製品を作っているところがほとんどです。
(私は自動車関連の業界でしたが、シェア世界一の製品がいくつかありました。)

会社として世界規模の製品を作るので、すごい数の従業員がいますし、拠点も多いわけです。

製品の種類も多く、事業部ごとに社内の業務は各部署に細分化されています。

大企業の組織図

入社後、まずどの製品の事業部に配属されるかで会社生活を通して関わる製品が決まります。

そして、その事業部の中のどこかの部署に配属されます。営業、設計、開発、製造など。

後々同じ事業部の中で部署が変わることはありますが、他の事業部に移ることはまずありません。

配属される部署により、やることは異なります。

営業なら営業、設計なら設計と。

部署間で業務の連携はありますが、1人の従業員がいくつもの部署を兼任することはありません

1つの部署の中でも業務は細分化されています。

大企業は、このようにいくつものセクションで会社全体が成り立っているのです。

零細企業の場合

一方で零細企業は、基本的に多くの事業を抱えていることはありません。

何か1つの事業を専門的にやっている会社がほとんどです。

例えば

・町工場であれば切削加工が専門
・建設業であれば小規模工事が専門
・小売業であれば精肉が専門

という具合にです。

余剰人員を抱える余裕は無く、従業員はそうそう増やせません。

そのため、社内で1人の従業員がいくつもの種類の仕事を兼任していることが多いです。

私も現在メインとなる仕事以外にも、人事や総務の仕事も担当しています。

会社の規模は小さくても、担当する業務の範囲は大企業よりも広いのが特徴と言えるでしょう。

また、経営を身近に感じることができて、自分の仕事の頑張りが業績にどう反映されるか分かりやすいです。

知人のあるエクステリア業を行う会社は従業員が5人で、そのうちの主要な従業員1人が病気で長期間働けなかったときは、売り上げが 2/3 になったと言っていました。

主要な人物であればそれぐらい会社の業績に影響するのです。

従業員の立場からすれば、上手くやれば替えが聞かない人材になれるということですね。

船に例えるなら

大企業が大型船だとして、そこの従業員を乗組員とすると、乗組員は大海原を見ることはありません。

船が進んでいる方向が分らないのです。また、船の外は波があるのか穏やかなのかなどの環境もよく分かりません。

そういうことを肌で感じ取れるのは、上層部だけです。

それに対して零細企業は、小さくて小船のようですが、大海原がよく見えます。

船が進む方角、波の高低などがとてもよく分かります。

一従業員の立場でも経営のことが分かる環境というのは大企業には無いものです。

調整業務の多さ

大企業の場合

大企業だと、部署の中で数人で1つの課でチームとなり仕事を進めます。

仕事は課の中だけで片付くことはほとんどなく、同じ部署の他の課や他部署と調整のための打合せをすることが多いです。

私は係長になる直前で退職しましたが、その年齢の従業員であっても一日に最低1つは打合せがありました(多い日は3つぐらい)。

何を決めるのかをはっきりさせて打合せに臨まなければいけません。打合せのための準備にもそれなりに時間を使います。

基本、自分の課にとって有利に物事を決めたいわけです。もちろん妥協することも大切ですが。

時に打合せは戦場となります。

同じ会社の仲間のはずなのに、勝たなければならないとか負けられないという思いを持ってしまうのです。

同じ部屋のすぐとなりの課が敵なんてこともありました。

皆忙しい中で日々議論するので、時には喧嘩になったりしてギスギスすることもあるのです。

これは会社が大きいから起こることでしょう。

会社が大きく、それぞれの役割を持つ人々が連携し合って全体の事業が出来上がっていくので、調整調整の毎日になるわけです。

「自分が所得する課」以外の人と一緒に仕事をする場合は、自分が課を代表しているという意識を持つべきです。

零細企業の場合

さて、一方で零細企業の場合、社長がすべての調整を行うことになります。

従業員同士で打合せをするということも、ほとんどありません。

会社自体の業務の規模が、大企業で言うところの1つの課ぐらいの会社が多いです。

会社の中のことは社長が把握できていなければなりません。

従業員に調整業務はまずありません

調整業務についての記事

調整業務についてはこれらの記事↓ も参考にして頂ければと思います。

情報共有、責任の分散

大企業の場合

大企業では、情報の共有はとても大事です。なぜなら先にも書きましたように、自分の仕事に関係する人が多いからです。

関係者にメールを送る際には、上司はもとより他の課や他の部署の人にも cc で情報展開することが多かったです。

cc で情報を展開することは責任を分散する意味でも大事なのです。

メールを受信している事実があれば「俺はそんなことは知らない!」と、後で突っぱねたりすることができなくなるからです。

また、重要な内容であれば FAXの形式で上司の承認を貰ってから、メールで送信することが習慣になってました。

このように、情報共有も言葉とおりに単に情報を共有するだけでなく、証拠を残したり、責任を分散したりするための手段でもありました。

零細企業の場合

零細企業の場合、業種にもよりますが社内での情報展開は非常にやりやすいです。

社長が従業員全員の前で一声かければいいだけだからです。

メールで cc を付けて情報展開しているところもあまり無いと思います。

社外へ何かメールで連絡する機会があるのが、社長をはじめとした経営者だけという場合もあります。

基本的には社長がすべてを把握していなければいけません。

大企業であるような責任の分散という概念はありません。

球は長く持たない

さて、これは大企業、零細企業どちらで働くうえでも重要なことですが「球は長く持たない」ことが鉄則です。

仕事が来たらすぐに自分の責任が無いところへ手放すということです。

特に何か問題が発生したりしたら、それはすぐに上司(零細企業であれば社長)に報告しなければいけません。

問題を自分一人で抱え込んでいたら、それはいつまで経っても自分の責任になってしまいます。

自分よりも上位の人間に報告することで、自分の責任の範囲から離れて行くのです(その後の問題解決のための業務を対応するのは自分だとしても)。

他にも例えば、関係者からメールで何か依頼を受けていて、分からないことがあったからと言ってそれを放置したらいけませんよね。

もし分からないことがあったらすぐに「〇〇の部分を詳しく教えてください」という具合に返信して相手に球を持たせるようにするべきです。

相手にメールを送った事実が残れば、その瞬間からその球は自分から離れたことになります。

仕事が来たら、テンポよく自分の責任の範囲から外していくことが大事です。

人脈の作り方

大企業の場合

大企業では社内人脈が非常に大事です。

多くの人が仕事に関わるので、何でも頼みやすい関係を人と築いておくに越したことはありません。

私も多少の努力はしていました。

ホワイトカラーの技術者だったので、現場(工場)の人に自分が計画した実験を依頼することが多かったです。

人によっては業務を依頼したらそのまま丸投げということもあったのですが、私はたまに意識的に現場を見に行くようにしました。

実験をやっているところに行って「調子はどうですか?」という具合に現在の状況を聞いて「お願いしますね!」と一言言うだけで、だいぶ相手の気持ちも違ったようです。

また、仕事で関係する人たちとの飲み会が開催されたときには、正直面倒でしたが行くようにしていました。接触頻度を増やすことは大事です。

あと、当時たばこを吸っていたので社内の喫煙室に行くことが多かったですが、そこには他の人々もいるわけです。

喫煙室で話しができるようになった人もいます。そういう人々と後々仕事で関わるようになると既に知っているので物事が円滑に進むものなのです。

私がやってきたことなど微々たるもので、自分よりもずっと人脈作りに力を入れて八方美人になっている人はたくさんいました。

八方美人というと何も意思を持っていないようにも感じられますが、それだけでキャラ立ちするので大企業の一従業員として生きていく上では重要な処世術だと思います。

零細企業の場合

さて、零細企業の場合は従業員の人数が少ないので、皆顔見知りです。

社内の仲を深めるために飲み会などがあれば出た方が良いことは間違いありません。

しかし、人脈と言えばそれ以上に社外人脈を意味します。

仕事に繋げるためには外部との接触は欠かせません。

商工会議所や法人会、あるいはボランティアなど、他の会社の人が参加する場所に顔を出すことで人脈が広がって行きます。

特に会社が地域密着でやっている場合などはそうです。

営業担当者であればそういうことが大事なのはもとより、営業以外の者が仕事を取れることもあり得るわけです。

そういう集まりに行ってあからさまに営業をするということではありません。

あくまで、その会でやるべきことをやるのですが、そういう活動を通じて顔を覚えてもらうことが大事なのです。

何か仕事で必要になったときに「あ、あの人がいたな!」と頭に思い浮かべてもらえるようになれば、それが仕事に繋がります。

駅前

人脈についての記事

大企業、零細企業それぞれの人脈については、こちらの記事↓ も参考にして頂ければと思います。

仕組み

大企業の場合

大企業は仕組みがしっかりしています

例えば

・有休を取るなら申請書を〇〇さんに提出する
・社内外に郵便物を送るときには部署のメールボックスに入れておけば定期的に配達員が配達してくれる
・社内の番号案内がある
・出張の際の切符の手配は Web 上で申請すれば後日送られてくる
・入口の門で入退場の際にICカードをかざせば勤務時間が自動的に集計されて、残業時間も管理される

など、従業員全員が当たり前のように利用できる仕組みがたくさんあります。

また、仕事をする上で新しく関わることとなる人々は、基本的に皆協力してくれます。

それも仕組みで、社内で連携し合うようになっているからなのです。

こういう点は大企業で働くことのメリットと言えるでしょう。

勘違いせずに認識しておかなければならないことは、自分だから協力して貰えるというのではなく、そういう仕組みだから協力して貰えるということです。

先に社内人脈が大事と書きましたが、それは根本的に仕事で繋がれるかどうかという意味ではなく、双方が気持ちよく仕事をするために大事という意味です。

大企業の仕組みに頼ってできていたことを自分の実力と勘違いしないことです。

どれだけ組織の中で力があった人でも会社を一歩出ればただの人です。

課長でも部長でもです。

零細企業の場合

零細企業だとあらゆる仕組みが大企業ほどしっかりしていません。

そもそも仕組み自体がない場合もあります

先にあげた大企業の仕組みの例を現在の自分の環境に置き換えるとこうなります↓

・有休を取るなら申請書を〇〇さんに提出する
⇒ 従業員の数が少なく仕事が回らなくなるのでそもそも有休が無い。休みが必要なときは社長に話す。

・社内外に郵便物を送るときには部署のメールボックスに入れておけば定期的に配達員が配達してくれる
⇒ 自分で郵便局に出しに行く

・社内の番号案内がある
⇒ オフィスが1つだけなので無い

・出張の際の切符の手配は Web 上で申請すれば後日送られてくる
⇒ 自分で手配しなければならない

・入口の門で入退場の際にICカードをかざせば勤務時間が自動的に集計されて、残業時間も管理される
⇒ IC カードは無く自分で記録しなければならない

これまで仕組みに頼っていたところを自分でやらなければならないとなったとき、最初はカルチャーショックでした。

いかに気付かないうちに多くの人に支えられていたのかも実感しました。

仕事で新規に何かはじめるときは、社外の人に働きかけなくてはなりませんが、新しく取引先を作るのも大変なことです。

「大企業のように仕組みで社内の人が協力してくれる」のとは訳が違います。

仕組みがあるというのは社内のリソーセス(ヒト・モノ・カネ)が豊富だからなのです。

大企業は、何でも社内で持っているからでかきるのです。

零細企業はそうは行きません。

ただ、それ故に何かを推進できた時には大企業にいた時以上の満足感を感じますし、確かな実力が身に付いたと実感できます。

まとめ

大企業と零細企業の仕事の違いについてお話ししました。

大企業での当たり前を持ったまま零細企業に転職すると、ショックを受けることもあるでしょう。

逆に零細企業から大企業に転職した人であれば、何て甘えれる環境なんだ! って思うかも分かりません。

どちらも決して楽ということはなく、それぞれの苦労はありますが、その内容が異なります。

どちらが合っていますでしょうか?