給料から天引きされるもの、所得税、住民税、社会保険料とは何か?

給料って色々なものが天引きされているって聞くのですが、よく分かりません。

天引きってどういうものか、教えてもらえませんか?

RYO
分かりました。

サラリーマンの給料から天引きされるものについて、できる限りかみ砕いてお話ししてみます!

私は、大企業(大手メーカー)で8年間エンジニアとして勤務しました。

現在は、辞めており家業を営む立場です。

給料を貰う立場と支払う立場の両方を経験しております。

大企業の新人サラリーマンになったばかりの頃は、給料から何が天引きされているのか? 天引きの意味も分かっていませんでした。

RYO
それでは行ってみましょう!

給料から天引きされるもの、所得税、住民税、社会保険料とは何か?

給料から天引きされるもの、所得税、住民税、社会保険料とは何か?

給料明細の見方

まず、給料明細の見方を説明しますね。

サラリーマンの方は、給料日の前後に以下のような給料明細を会社から受け取るでしょう。

給料明細1

いくつもの項目があるのが分かりますよね。

天引きされているものを理解するために大事な項目は以下です。

●総支給額
●所得税
●住民税
●社会保険料
給料明細2

総支給額は、給料額面と呼ばれたりもします。

色々と天引きされる前の給料の金額のことです。

所得税住民税社会保険料は総支給額から天引きされるものです。

これらを差し引いて残った金額を差引支給額と言います。いわゆる手取りというやつですね。

給料額面と天引き

以下で所得税住民税社会保険料について説明しますね!

所得税

所得税とは、収入がある個人にかかる税金です。

国に支払うことになります。

一年間の所得税は、暦年 1/1 〜 12/31 の期間を対象に計算します。

所得はサラリーマンの場合、以下のように計算します。

所得 = 給与収入 − 給与所得控除

課税所得 = 所得 − 所得控除

給与収入は給料額面のことです。

また、給与所得控除は給与収入に応じて自動的に決まります。

そして、課税所得に税率を掛けて計算します。

所得税 = 課税所得 × 税率 − 控除額

税率は以下のように定められています。

所得税の税率のことを累進税率といい、課税所得が大きいほど大きくなります。

所得税率

国税庁のサイトより

所得税は所得が大きいほど大きくなり、また税率が大きいほど大きくなります。

自営業者(ラーメン屋など)は、確定申告により1年間に1回所得税を計算して国に支払います。

それに対してサラリーマンの場合は、基本的に確定申告をする必要はありません。

代わりに、会社から毎月の給料から所得税を天引きされます。

そして、会社がそれを従業員に代わって国に支払います。

従業員からすれば、前もって少しずつ所得税を支払うイメージです。

1年間に1回まとめてではなく。

前もって少しずつ所得税を支払う

天引きされる所得税額は、源泉徴収税額表から読み取って決められます。

給料額面が大きいほど大きくなり、また、扶養親族(養う親族)の数が少ないほど大きくなります。

所得税は本当は1年が経った後でないと、厳密な金額は分かりません。

ですので、年末に「毎月天引きした金額」と「厳密な金額」の過不足を調整します。

これを年末調整と言います。

足りなければ、追加で天引きされます。

年末調整で追加徴収

逆に多く天引きしていれば従業員に戻します。

年末調整で還付

住民税

住民税も所得税と同じく、収入がある個人にかかる税金です。

市民税と県民税の2つがあります。

住民税 = 市民税 + 県民税

市民税は市町村に、県民税は県に支払うことになります。

また、所得税と違う点は、前年の所得に基づいて計算される点です。

所得税と同じくまずは所得を計算します。

所得 = 給与収入 − 給与所得控除

課税所得 = 所得 − 所得控除

そして、課税所得に税率を掛けて計算します。

住民税 = 課税所得 × 税率 − 控除額

税率は、全国一律で 10%です。

市民税が6%、県民税が4%。

(一部の地域で、税率が異なるところもありますが。)

そして、所得が0円の人でも最低一年間で 5,000円かかります。

内訳は市民税3,500円で県民税1,500円です。

前年の所得から計算された住民税を、今年の5月から向こう1年間、1/12して毎月給料から天引きされます。

住民税の天引き

社会保険料

社会保険料は、病気や怪我をしたときの保障や、老後のために支払うものです。

以下のものに細分されます。

●労働保険料・・・雇用保険料、労災保険料

●社会保険料・・・健康保険料・介護保険料、厚生年金保険料

給料明細にも各々の記載があります。

社会保険料の天引き

労働保険料

労働保険料には、雇用保険料と労災保険料の2つが含まれます。

雇用保険料

雇用保険は失業保険とも呼ばれており、従業員が失業した場合に毎月いくらかの支給を受けることができるもので、そのための保険料の支払いを雇用保険料と言います。

雇用保険料は以下のように計算します。

雇用保険料 = 給料額面 × 雇用保険料率

雇用保険料は従業員と会社が、それぞれ負担します。

保険料率は

●会社負担分が 6/1000
従業員負担分が 3/1000

毎月の給料から天引きされるのは従業員負担分の方なので、給料額面の 3/1000 が天引きされるということになります。

だいたいの人が、月1,000円前後の負担額です。

労災保険料

労災保険とは従業員が業務上けがや病気になったときに、給付を受けれるもので、そのための保険料の支払いを労災保険料と言います。

労災保険料は全額会社負担なので、給料額面からの天引きはありません

社会保険料

社会保険料には、健康保険料・介護保険料と厚生年金保険料が含まれます。

健康保険料・介護保険料

健康保険は従業員がプライベートでけがや病気になったときに、医療費の大部分を国に負担してもらう制度で、健康保険料はそのための支払いになります。

介護保険は、介護が必要になったときに給付を受けれるもので、介護保険料はそのための支払いです。40歳に達したときから支払いが開始します。

健康保険料・介護保険料は会社と従業員が折半して、会社が協会けんぽなどの保険者に支払います。

以下の計算式により、計算します。

健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率

介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率

標準報酬月額というのは個々の従業員の4~6月分の給料額面を平均した金額で、毎月9月に改定され1年間同じ金額を使います。
標準報酬月額

健康保険料率・介護保険料率は県によって若干異なりますが、両方合わせてだいたい11%程度です。毎年1回、3月に改定され全国的に毎年、増加傾向にあります。

従業員の給料額面から天引きされるのは半分です。

厚生年金保険料

厚生年金とは、基礎年金である国民年金にさらに上乗せして支給される年金で、厚生年金保険料はそのための支払いです。

厚生年金保険料は会社と従業員が折半して、会社が日本年金機構に支払います。

以下の計算式により、計算します。

厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率

*標準報酬月額は、健康保険料の計算と同じものを使います。

厚生年金保険料率は全国一律で同じで、現在 18.3%です。毎年1回、9月に改定され、ここ数年高止まりの状態です。

従業員の給料額面から天引きされるのは半分です。

大企業だともっと多くのものが天引きされる

大企業だともっと多くのものが天引きされる

さて、給料から天引きされるものについてお話ししましたが、企業によっては上記に加えて独自の天引きがある場合も会います。

大企業だと、福利厚生が充実しています。

住宅財形や積立などを給料から天引きして、会社に運用を任せることもできます(従業員の選択で)。

大企業の給料明細

詳しくはこちら↓ の記事を参考にしてください。

給料から天引きされるものをどう捉えるか?

さて、給料から様々な天引きがあると、手取りが減ることがお分かり頂けたと思います。

給料額面と天引き

手取りが減るのは気分のいいものではありません。

一生懸命働いたのに、なんで給料から色々天引きされなきゃならないんだ! って思う方もいると思います。

しかし、所得税・住民税はそもそも絶対に払わなければならない税金です。

国や市町村のサービスを今以上に充実させるために必要なお金なので、巡り巡って自分に戻ってくるものです。

一気に全額支払うのは大変なので、会社が月々に分けて代わりに支払ってくれていると捉えれば良いでしょう。

自営業者だと自分で支払わなければなりません。

また、社会保険料は万が一の場合や、将来の老後のために備えて会社が代わりに支払ってくれていると捉えれば良いでしょう。

サラリーマンは、税金・社会保険料とも支払いを会社がやってくれるので、ある意味楽なのです。

また先にも示した私の大企業時代の給料明細↓

大企業の給料明細

上記は私が大企業にいて30歳過ぎた頃の給与明細ですが、給料額面が45万以上あるのに対して手取りは20万円を下回っていました

天引きされ過ぎだろ? と思うかも知れませんが、将来のための住宅財形や積立、持株拠出金などが多いので、将来より大きくなって戻ってくる可能性がある福利厚生の一環でした。

まとめ

サラリーマンの給料から天引きされるものについて、お話ししました。

所得税、住民税、社会保険料は必ず支払わなければならないものです。

従業員の生活に必要なものであることを認識しましょう!